大学院生になって1年経つと、日本ではいわゆる就職活動が始まり、自分も未来を考え始めた。
選択肢として、「台湾に戻り就職」、「日本に残り就職」、「海外に進学」といったものがあった。
海外進学には大きいな経済負担がのしかかるし、そろそろ「仕事」の経験を得たいので、就職の道を選んだ。
そして、「やはりもっと色々なことを日本でやってみたい!もっと日本を深く知りたい」という思いがあり、日本で就職することに決めた。
それで、「就職活動」を始めた。
意外にも、それは全く別世界の話だった。
就職は仕事探しだと思い、台湾では学生が自分でネットでもしくは大学教授の紹介で会社に履歴書を投げて返事を待つ。連絡が来たら、面接だけで合格か不合格かが決まる。場合によって筆記試験もあるが。
私はこんな考え方で「会社説明会」に行った。
しかも、当日にエントリシートの提出ができると聞いて、当日に5分くらいちゃちゃっと書いて提出した!しかも人事担当の目の前で!
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今から考えるとあり得ないが、その時は単純に「応募の声かけ」としか考えていなかった。
日本の就職文化は極めて特殊だ!
その特徴を下記のいくつが代表になると思う。
経験者より新卒を好む
全国一斉に採用開始
採用プロセスは非常に煩雑
最初は「何このめんどくさい就職文化だ」と思ったが、今になって考えるとちょっと納得できるようになった。
その理由は過去からの環境背景にある。
まず、日本の企業の多くは終身雇用を継続している。基本的に入社した正社員を定年まで解雇しない。(第二次大戦後から経済が高度成長し、社員を雇えば売り上げが増える。なのでドンドン雇い、解雇しない。社員も解雇されることなく、定年まで続けるのが普通。また、日本の労組の権力が強く、解雇されないようにパワーバランスが保たれている)
この条件であれば、入社させると決める瞬間が会社にとって最も大事な時になる。
厳選したいため、選考プロセスが自然に膨大化する。
私の入社した日本企業である国内社員数12,000人で約50%の売上が海外から(2008年当時)のグローバル大手企業の選考プロセスは下記だった。
「会社説明会」→「エントリシート提出」→「筆記試験」→「一次面接」→「先輩社員懇談会」→「二次面接」→「会社施設見学(小論文の提出あり)」→「最終面接」という7つのステップと前後合わせて3ヶ月の時間も要した。
外国人にとってはあり得ない煩雑さだが、「今後の40年間はずっとこの人に給料を払い続けなければいけない」と会社の立場から考えれば、それほど面倒なプロセスでも思わなくなるかもしれない。
また、40年間もずっと同じ会社にいるので、専攻などの専門性も高く追及しない。なので、修士や博士は外国ほどの専門性を持っているように使われていない。
薬学出身でも機械関連の仕事を任されたり、マーケティングに全く知識も経験もなくてもマーケティングの仕事が任されたりすることもある。
40年間もずっと会社にいるという背景にある条件から考えると、学校で勉強してきた4年間の知識を活用するより、会社で何年間実務経験を積ませて、会社にとって使いやすいように教育した(成長してもらった)ほうが全社的に得するし、楽ということだろうね。
続く。